イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

帰り道、足取りはゆっくりだった。
急ぐ必要はなかった。今は、そう思えた。

ポケットの中で、名刺の角が指先に触れるたび、不思議と気持ちが落ち着く。

“何かあったら、また来てください”
それは警察官としての言葉だったはずなのに、今の美香奈には、それ以上の意味を持っていた。

ただ一人で恐れていた頃とは違う。
話を聞いてくれる人がいる。受け止めてくれる人がいる。

それが、どれほど心強いことか。

(神谷さんが、いてくれる)

名前を心の中でそっと呼ぶ。
それだけで、胸の奥に優しい灯がともった気がした。

これから何が起こるのかはわからない。
でも、もう“ひとりで抱え込まなくていい”と、初めて思えた。

小さな決意と共に、美香奈はアパートへの階段を上がっていった。