イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

名刺を手にしたまま、美香奈はしばらくその小さな紙を見つめていた。

“神谷涼介”。
所属、役職、連絡先――形式的な情報が並ぶだけの、ただの仕事道具。

けれど、そこに込められた想いを、美香奈は確かに感じていた。

(この人は、ちゃんと私のことを見てくれてる)

必要最低限の言葉しか交わしていないのに、そう思えるのはなぜだろう。

きっと、それは彼が“約束”を口にせずに果たそうとしてくれているからだ。

「橋口さん」

神谷が声をかける。
その響きにも、もう“遠さ”はなかった。

「不安なときは我慢しないでください。些細なことでも、知らせてもらえれば」

「……はい。ありがとうございます」

言葉にできるのは、それだけだった。
でも、その一言に、感謝のすべてがこもっていた。

交番を出るころには、外の空気がほんの少しだけ優しく感じられた。

怖さは、まだ消えていない。
けれど、その中に“信じられる誰か”がいるという事実が、美香奈の足元を支えてくれていた。