イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

「じゃあ、気をつけて帰ってください」

神谷はいつもの調子でそう言うと、帽子のつばに手を添えて軽く会釈した。

無駄な言葉も、表情の演技もない。
でも、それで十分だった。

「……はい。ありがとうございます」

美香奈も同じように会釈して、歩き出す。
背中に残る神谷の気配が、やけにあたたかく感じた。

角を曲がって姿が見えなくなってからも、心の中には静かな余韻が残っていた。

あんなふうに人と話して、安心できたのはいつぶりだろう。
短くて、たどたどしくて、でも正直な会話だった。

冷たく見えた人が、ほんの少しだけ心を開いてくれたような気がして――それが、うれしかった。

まだ知らないことばかり。
名前以外、なにもわからない人。

それでも。
もっと知りたいと思ってしまう自分がいた。

(また、話せるといいな)

その願いを胸に、小さなため息と一緒に、夜の街に溶けていった。