その日の夕方、美香奈はまた交番の前を通りかかった。
不審者の件があってからというもの、この道を選ぶようになっていた。
無意識のうちに、どこかで“安心したい”という気持ちが働いているのかもしれない。
ちょうど、交番の前で立っていたのは、神谷だった。
制服姿で、町内の地図を手にして、何か確認している。
今日も無表情で、声をかけるには少し勇気がいった。
でも――今日はなんとなく、話してみたくなった。
「こんばんは。……お仕事中、すみません」
声をかけると、神谷は顔を上げた。
一瞬だけ驚いたような目をして、それからいつもの無表情に戻る。
「こんばんは。いえ、大丈夫です」
その言い方は相変わらず淡々としていたが、どこか柔らかさを含んでいた。
「交番の仕事って……大変ですか?」
気づけば、そんなことを聞いていた。
神谷は少しだけ目を伏せてから、ぽつりと答える。
「人と話すのは……あんまり得意じゃないんで。慣れないです、まだ」
不審者の件があってからというもの、この道を選ぶようになっていた。
無意識のうちに、どこかで“安心したい”という気持ちが働いているのかもしれない。
ちょうど、交番の前で立っていたのは、神谷だった。
制服姿で、町内の地図を手にして、何か確認している。
今日も無表情で、声をかけるには少し勇気がいった。
でも――今日はなんとなく、話してみたくなった。
「こんばんは。……お仕事中、すみません」
声をかけると、神谷は顔を上げた。
一瞬だけ驚いたような目をして、それからいつもの無表情に戻る。
「こんばんは。いえ、大丈夫です」
その言い方は相変わらず淡々としていたが、どこか柔らかさを含んでいた。
「交番の仕事って……大変ですか?」
気づけば、そんなことを聞いていた。
神谷は少しだけ目を伏せてから、ぽつりと答える。
「人と話すのは……あんまり得意じゃないんで。慣れないです、まだ」



