「神谷涼介、着任しました」
県警本部・捜査一課。
初日の朝、緊張と覚悟を胸に、神谷はまっすぐに立っていた。
交番勤務で鍛えた足元は、決して揺るがない。
初対面の隊員たちの中にあっても、
彼の姿勢は落ち着きと芯のある静けさを保っていた。
ブリーフィングが終わった後、
一人の男が神谷を呼び止めた。
「――神谷。時間、少しいいか?」
声をかけてきたのは、捜査一課の課長・篠宮政吉だった。
40代半ば、無駄のない体躯と、切れ味のある眼差し。
現場叩き上げでありながら、理論にも強く、若手にも一目置かれる存在。
神谷はすぐに敬礼し、応じた。
課長室の一角に通されると、篠宮は椅子に腰を下ろしながら、無駄のない口調で言った。
「申し送りは一通り目を通している。
君のことは、前から耳にしていたよ。……現場評価は高かった」
「恐縮です。……ご期待に添えるよう、尽力します」
「それは頼もしいな。――ただひとつ、確認がある」
篠宮の目がわずかに鋭くなった。
「橋口美香奈さんとの交際、だな。事件後に始まったとあるが、それで間違いないか?」
「はい。事件終結後に私的な関係になりました。
捜査に私情を挟んだ事実は、一切ありません」
神谷の声は、迷いなく、まっすぐだった。
篠宮は少しだけ頷いて、手元の書類を閉じた。
「信じているよ。俺は“現場の人間”の目を信じている。
……それに、君が誰かを大切にする姿勢は、悪くないと思ってる」
「ありがとうございます」
「ただし――今後、結婚などを考えるようであれば、身辺調査を含めた申告と手続きが必要になる。
その時が来たら、遠慮せずに報告してくれ」
神谷は姿勢を正し、静かに頷いた。
「……はい。必要になったときは、必ず申請します」
篠宮はわずかに口元を緩めた。
「期待している。現場は忙しいが、君の力を借りたい。しっかり頼むぞ」
「了解しました」
神谷は再び敬礼し、課長室を後にした。
――信頼されるということは、選ばれるということ。
背負うものがまた一つ、神谷の背中に加わった。
県警本部・捜査一課。
初日の朝、緊張と覚悟を胸に、神谷はまっすぐに立っていた。
交番勤務で鍛えた足元は、決して揺るがない。
初対面の隊員たちの中にあっても、
彼の姿勢は落ち着きと芯のある静けさを保っていた。
ブリーフィングが終わった後、
一人の男が神谷を呼び止めた。
「――神谷。時間、少しいいか?」
声をかけてきたのは、捜査一課の課長・篠宮政吉だった。
40代半ば、無駄のない体躯と、切れ味のある眼差し。
現場叩き上げでありながら、理論にも強く、若手にも一目置かれる存在。
神谷はすぐに敬礼し、応じた。
課長室の一角に通されると、篠宮は椅子に腰を下ろしながら、無駄のない口調で言った。
「申し送りは一通り目を通している。
君のことは、前から耳にしていたよ。……現場評価は高かった」
「恐縮です。……ご期待に添えるよう、尽力します」
「それは頼もしいな。――ただひとつ、確認がある」
篠宮の目がわずかに鋭くなった。
「橋口美香奈さんとの交際、だな。事件後に始まったとあるが、それで間違いないか?」
「はい。事件終結後に私的な関係になりました。
捜査に私情を挟んだ事実は、一切ありません」
神谷の声は、迷いなく、まっすぐだった。
篠宮は少しだけ頷いて、手元の書類を閉じた。
「信じているよ。俺は“現場の人間”の目を信じている。
……それに、君が誰かを大切にする姿勢は、悪くないと思ってる」
「ありがとうございます」
「ただし――今後、結婚などを考えるようであれば、身辺調査を含めた申告と手続きが必要になる。
その時が来たら、遠慮せずに報告してくれ」
神谷は姿勢を正し、静かに頷いた。
「……はい。必要になったときは、必ず申請します」
篠宮はわずかに口元を緩めた。
「期待している。現場は忙しいが、君の力を借りたい。しっかり頼むぞ」
「了解しました」
神谷は再び敬礼し、課長室を後にした。
――信頼されるということは、選ばれるということ。
背負うものがまた一つ、神谷の背中に加わった。



