「えっ……ほんとに、炒め物とスープ、同時進行できるんだ……」
キッチンカウンター越しに見つめる美香奈が、ぽつりとつぶやく。
神谷はフライパンを揺らしながら、
背中で微笑んだ。
「何だよその“意外”みたいな反応は」
「だって……。
ふだん無愛想なのに、料理してるときは手際良くて……なんか、ギャップすごいなって」
「……“ふだん無愛想”って、今、言ったな?」
「うっ……言って……ない。かも」
「言った。言ったから、はい減点。
罰として、今夜のデザートは取り上げです」
「ひどいっ! デザートだけは、返して……!」
美香奈は思わず立ち上がって、カウンター越しに身を乗り出した。
その瞬間、神谷がくるりと振り返り、
ちょうど正面から目が合う。
「……言い方、変わったな」
「え?」
「敬語じゃなかった。いま、普通に話してた」
「……あ」
気づいて、顔がぽっと赤くなる。
「気づかなかった……ごめん、つい」
「いいじゃん。その方が……俺は、嬉しい」
そう言って、炒め終えたフライパンをコンロから外しながら、
神谷は視線を外さずに続けた。
「どんどん砕けてってくれ。
……そっちの君も、もっと見てみたい」
「……じゃあ、頑張る。涼介にも、馴染んでいけるように」
その返事に、神谷は一瞬だけ動きを止めて、
それから、ふっと微笑んだ。
「……“涼介”って、今、呼んだよな?」
「っ……や、やっぱり今のナシ!!」
「ダメ。いただきました」
「やだー……!」
顔を覆う美香奈の横で、スープの湯気が優しく立ちのぼる。
それはまるで、ふたりの距離が近づいた証みたいに、
ほんのりと甘く、部屋の空気をあたためていた。
キッチンカウンター越しに見つめる美香奈が、ぽつりとつぶやく。
神谷はフライパンを揺らしながら、
背中で微笑んだ。
「何だよその“意外”みたいな反応は」
「だって……。
ふだん無愛想なのに、料理してるときは手際良くて……なんか、ギャップすごいなって」
「……“ふだん無愛想”って、今、言ったな?」
「うっ……言って……ない。かも」
「言った。言ったから、はい減点。
罰として、今夜のデザートは取り上げです」
「ひどいっ! デザートだけは、返して……!」
美香奈は思わず立ち上がって、カウンター越しに身を乗り出した。
その瞬間、神谷がくるりと振り返り、
ちょうど正面から目が合う。
「……言い方、変わったな」
「え?」
「敬語じゃなかった。いま、普通に話してた」
「……あ」
気づいて、顔がぽっと赤くなる。
「気づかなかった……ごめん、つい」
「いいじゃん。その方が……俺は、嬉しい」
そう言って、炒め終えたフライパンをコンロから外しながら、
神谷は視線を外さずに続けた。
「どんどん砕けてってくれ。
……そっちの君も、もっと見てみたい」
「……じゃあ、頑張る。涼介にも、馴染んでいけるように」
その返事に、神谷は一瞬だけ動きを止めて、
それから、ふっと微笑んだ。
「……“涼介”って、今、呼んだよな?」
「っ……や、やっぱり今のナシ!!」
「ダメ。いただきました」
「やだー……!」
顔を覆う美香奈の横で、スープの湯気が優しく立ちのぼる。
それはまるで、ふたりの距離が近づいた証みたいに、
ほんのりと甘く、部屋の空気をあたためていた。



