「おはようございます」
事務所の扉を開けた美香奈が挨拶をすると、
女性事務員の沢口がちらりと顔を上げた。
「おはようございます。……なんか橋口さん、顔がやわらかい気がしますね?
いい夢でも見てたとか?」
「えっ……? そ、そんなことないですよ?」
美香奈は慌てて笑顔を作り、デスクへと急いだ。
(……顔に出てる……? いや、そんなはず)
奥から真木弁護士の落ち着いた声が飛んでくる。
「まあまあ、春の日差しの中では誰でも少しは緩むさ。
心があたたかいと、顔も自然とそうなるものだよ。……たとえば、朝に飲んだ紅茶の香りとかでね」
その“妙に刺さる”言い方に、思わず肩がピクリと動いた。
「い、いえ、普通に朝ごはんを食べてきただけですっ」
「そうかそうか。……じゃあ今日の相談案件、午前中からしっかり頼むよ」
「はいっ!」
パソコンの前に座りながら、美香奈はこっそり深呼吸をした。
(ちゃんと切り替えなきゃ。仕事モード、仕事モード……)
けれど、指先の奥にはまだ、今朝の温もりが残っている気がしていた。
隣の席の沢口が、小声でこそっと囁く。
「……橋口さん、寝癖ちょっとだけ。
春はぐっすり眠れちゃいますもんね。夢見心地って感じで」
「なっ……!?」
「ふふ、春って素敵ですよねぇ」
美香奈は顔を熱くしながら、
モニターに視線を集中させることで、なんとか平静を保とうとした。
事務所の扉を開けた美香奈が挨拶をすると、
女性事務員の沢口がちらりと顔を上げた。
「おはようございます。……なんか橋口さん、顔がやわらかい気がしますね?
いい夢でも見てたとか?」
「えっ……? そ、そんなことないですよ?」
美香奈は慌てて笑顔を作り、デスクへと急いだ。
(……顔に出てる……? いや、そんなはず)
奥から真木弁護士の落ち着いた声が飛んでくる。
「まあまあ、春の日差しの中では誰でも少しは緩むさ。
心があたたかいと、顔も自然とそうなるものだよ。……たとえば、朝に飲んだ紅茶の香りとかでね」
その“妙に刺さる”言い方に、思わず肩がピクリと動いた。
「い、いえ、普通に朝ごはんを食べてきただけですっ」
「そうかそうか。……じゃあ今日の相談案件、午前中からしっかり頼むよ」
「はいっ!」
パソコンの前に座りながら、美香奈はこっそり深呼吸をした。
(ちゃんと切り替えなきゃ。仕事モード、仕事モード……)
けれど、指先の奥にはまだ、今朝の温もりが残っている気がしていた。
隣の席の沢口が、小声でこそっと囁く。
「……橋口さん、寝癖ちょっとだけ。
春はぐっすり眠れちゃいますもんね。夢見心地って感じで」
「なっ……!?」
「ふふ、春って素敵ですよねぇ」
美香奈は顔を熱くしながら、
モニターに視線を集中させることで、なんとか平静を保とうとした。



