イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

「……ただいま」

玄関の扉が開いた瞬間、ふわりと漂う出汁の香りに、
神谷の表情が自然と緩む。

「おかえりなさい」

キッチンから顔を出した美香奈は、エプロン姿のまま、ほっとしたように微笑んだ。

「遅くなるって言ってたから、軽めにしておきました。お味噌汁と、雑炊」

「……ありがたい」

神谷は靴を脱ぎながら、そっと視線を向けた。
湯気の向こうにある彼女の存在が、どれほどあたたかいかを、
身体の奥がよく知っている。

着替えを済ませ、テーブルについた彼に、美香奈はお椀をそっと差し出す。

「今日は……長谷川さんと一緒だったんですよね?」

「ん。……また何か言ってた?」

「“神谷さんの顔が柔らかくなった”って。あと、“あれじゃバレバレだ”って」

神谷は、苦笑を押し殺すように箸を止めた。

「……あいつ、ほんと口が軽い」

「でも、いい人ですよね。ちょっとからかいが多いけど」

「それは……否定できないな」

ふたりは、どこかくすぐったいような空気をまといながら、食事を続けた。

食後、テーブルを片づけていると、
美香奈がそっと神谷の腕に自分の頬を寄せる。

「……お疲れさまでした。今日は、ちょっとだけ……甘やかしてもいい?」

驚いたように見下ろす神谷の視線を、美香奈は静かに受け止めた。

「わたし、最近ずっと、あなたに甘えさせてもらってばかりだったから。
今夜は、わたしの番。……ね?」

返事はなかった。
けれど、神谷の手がそっと彼女の腰にまわり、
そのまま自然と、ふたりはリビングのソファへ身を預ける。

言葉は少なくても、気持ちは確かに伝わっていた。

柔らかいクッションの上、
美香奈は彼の胸に頬を当て、静かに目を閉じた。

「……ほんと、温かい」

「……君も、な」

小さなぬくもりが重なって、
夜はゆっくりと、優しい色を深めていった。