「……それ、好きなんですか?」
神谷が聞いたのは、
美香奈がせっせと紅茶にミルクを足している場面だった。
「ん? ミルクティーですか? なんか……落ち着くんです」
彼女はカップを抱えたまま、にこっと笑った。
「じゃあ、今度は僕が用意しておきます。
君が好きなものは、ちゃんと覚えておきたいんで」
「……また、そういうことさらっと言う」
頬を赤らめながらも、笑いがこぼれる。
ふたりの朝は、少しずつ、けれど確実に「恋人らしい日常」に近づいていた。
交際が始まってから数日。
神谷の勤務が早く終わる日や休日は、ささやかな時間を共有するようになった。
ふたりでスーパーへ行って食材を選んだり、
美香奈が作った料理を神谷が「うまい」と言って食べてくれたり――
ありふれていて、けれどすべてが愛おしい時間だった。
その日、美香奈が小さなプリントを取り出した。
「これ、支援センターの研修会の案内なんです。
初心者向けのものから、心理的ケアや法的支援まで学べるって」
「……行ってみようと思ってる?」
「はい。……少しずつだけど、自分の経験を、誰かの役に立てたいって思えて」
神谷は、真剣にうなずいた。
「君なら、きっと“支える側”としても、素晴らしい人になる。
……あの夜、どんなに怖かったはずなのに、ちゃんと自分を保ってた。
そんな君を、俺はずっと見てたんです」
彼は、そっと美香奈の手を取る。
「だからこそ思う。
誰かの痛みに気づける君なら、きっと、大切な人を守れる人になれる」
視線を合わせたまま、言葉の余韻を残すように微笑んだ。
「それに……俺は、もうとっくに救われてますから」
「……それ、ずるいです」
「うん、でも本当だから」
言葉と手のひら、そのどちらもが、じんわりと胸に響いた。
神谷が聞いたのは、
美香奈がせっせと紅茶にミルクを足している場面だった。
「ん? ミルクティーですか? なんか……落ち着くんです」
彼女はカップを抱えたまま、にこっと笑った。
「じゃあ、今度は僕が用意しておきます。
君が好きなものは、ちゃんと覚えておきたいんで」
「……また、そういうことさらっと言う」
頬を赤らめながらも、笑いがこぼれる。
ふたりの朝は、少しずつ、けれど確実に「恋人らしい日常」に近づいていた。
交際が始まってから数日。
神谷の勤務が早く終わる日や休日は、ささやかな時間を共有するようになった。
ふたりでスーパーへ行って食材を選んだり、
美香奈が作った料理を神谷が「うまい」と言って食べてくれたり――
ありふれていて、けれどすべてが愛おしい時間だった。
その日、美香奈が小さなプリントを取り出した。
「これ、支援センターの研修会の案内なんです。
初心者向けのものから、心理的ケアや法的支援まで学べるって」
「……行ってみようと思ってる?」
「はい。……少しずつだけど、自分の経験を、誰かの役に立てたいって思えて」
神谷は、真剣にうなずいた。
「君なら、きっと“支える側”としても、素晴らしい人になる。
……あの夜、どんなに怖かったはずなのに、ちゃんと自分を保ってた。
そんな君を、俺はずっと見てたんです」
彼は、そっと美香奈の手を取る。
「だからこそ思う。
誰かの痛みに気づける君なら、きっと、大切な人を守れる人になれる」
視線を合わせたまま、言葉の余韻を残すように微笑んだ。
「それに……俺は、もうとっくに救われてますから」
「……それ、ずるいです」
「うん、でも本当だから」
言葉と手のひら、そのどちらもが、じんわりと胸に響いた。



