イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

「……じゃあ、今日から“恋人”ってことで、いいんでしょうか」

神谷の言葉に、美香奈はふっと笑った。

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

その返事を聞いたとき――
神谷の表情が、いつもより少しだけ子どもっぽく緩んだ気がした。

リビングに流れる空気は穏やかで、どこまでも静かだった。

神谷はゆっくりと立ち上がり、
美香奈のもとへ歩み寄ると、その肩にそっと手を添える。

「触れても、いいですか?」

その声の低さに、美香奈の胸がきゅっと鳴った。

「……はい」

たったそれだけの言葉で、
彼の腕がやわらかく、美香奈を包み込んだ。

制服越しではない、私服の温もり。
彼自身の体温が、じかに伝わってくる。

「……安心する」

そうつぶやいたのは、美香奈だったのか、彼だったのか。

ただ、お互いの肩の奥に頬を寄せたまま、
ふたりはゆっくりと、同じ呼吸を繰り返していた。

しばらくそうしてから、神谷がそっと離れた。

でも、すぐに――彼の手が、美香奈の髪にそっと触れる。

「少し伸びましたね。……似合ってます」

「……ありがとうございます。
そんなふうに褒められると、また切るのがもったいなくなりそうです」

「じゃあ……もう少し、このままで」

手のひらが、優しく髪を撫でる。

その仕草に、心までほぐれていくようだった。

そしてふと、神谷が耳元に顔を寄せて小さくささやく。

「君に会えて、ほんとによかった」

その一言で、胸がいっぱいになる。

これまでの恐怖や痛みが、すべて報われるような気がした。

ふたりの手が、テーブルの下で自然と絡まっていた。

もう、誰にも遠慮しなくていい。

これはふたりだけの時間で、
ふたりだけの、静かな恋の始まりだった。