イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

夜の静けさが、街のざわめきをひとつひとつ消していく。
窓の外に広がる灯りが、どこか遠く感じられた。

チャイムが鳴ったとき、美香奈はすでにドアの前で待っていた。
今日という日が来ることを、心のどこかで予感していたから。

「こんばんは。
遅い時間にすみません。……少しだけ、お時間をください」

神谷の声は、今までと変わらない優しさを含んでいた。
けれど、その目には、これまでにない“覚悟”のようなものがあった。

部屋に入ると、あたたかい白湯を挟んで、ふたりはテーブル越しに向き合った。

「……中原孝志、検察に送致されました。
起訴されて、これから裁判になります。
ようやく、“事件”としてのフェーズは終わりました」

美香奈は、ゆっくりと頷いた。

「……そうですか。やっと、少し……肩の力が抜けた気がします」

「それを聞けて、よかった」

神谷はそう言ってから、しばらく黙った。

やがて、マグカップに手を添えたまま、彼は口を開く。

「これまでは、僕はあくまで“担当の警察官”として君に接してきました。
その立場があるからこそ、踏み込まないようにしてきたつもりです」

美香奈は、彼の言葉の続きを待つように、静かに視線を向けた。

「でも、今日。事件が一区切りついた今。
ようやく、ひとりの人間として、君に向き合ってもいいと思えるようになりました」

彼の声は、どこまでも誠実で、まっすぐだった。

「……橋口さん。
これから先、もしよければ……僕の隣に、いてくれませんか」

その言葉に、美香奈の胸がふわりと熱くなる。

「……はい。私も、あなたと“そういうふうに”過ごしていきたいです」

静かに交わされた言葉は、
事件とはまったく違う、新たな物語の始まりを告げていた。

テーブルの上で、彼の手と美香奈の手が、以前より躊躇いなく重なる。

誰にも邪魔されない、やさしい時間のなかで――

ふたりは、少しずつ、恋を育てていくのだった。