「ここまでで大丈夫です。あとは我々で処理しますので」
刑事課の一角、供述確認を終えたあと、
担当の刑事が席を立ち、会議室から一時的に離れた。
室内に残されたのは、美香奈と、スーツ姿の神谷だけ。
わずかな静寂のなかで、神谷は確認するように口を開いた。
「……つらくなかったですか?供述中」
「……つらかったです。でも……ちゃんと話せて、少しだけ、気持ちが整理できました」
答える美香奈の声は静かだったが、明確な意思が宿っていた。
神谷は、ほんのわずかに眉を緩めた。
「……あなたの強さには、本当に頭が下がります」
「……でも、怖いことも、まだたくさんあります。
こうして話していても、ふと思い出す瞬間があって……体が冷たくなるんです」
その言葉に、神谷の指先がほんの一瞬だけ動いた。
けれど、すぐには何もしなかった。
ただ彼は、立ち上がってコートの内ポケットから、
小さなハンカチを取り出し、テーブルにそっと置いた。
「これは……?」
「前に、僕が使っていたものです。
いま、なにか冷たくなりそうなとき、これを手の中に握ってみてください」
美香奈は、驚いたようにハンカチを手に取り、
折り目の残るやわらかな布地をそっと見つめた。
「……いいんですか?」
「はい。持っていてくれると、僕も少し安心できます」
不器用な言葉のあとに、
ふと、美香奈の指先が神谷の手にわずかに触れた。
ほんの一瞬。
けれど、しっかりとした温度のある接触だった。
彼女は微笑みながら、そのまま目を逸らさずに言った。
「……ありがとうございました。
あなたがいてくれるだけで、心が落ち着くんです」
神谷は言葉を返す代わりに、そっと頷いた。
その瞬間、扉の向こうで誰かの足音が聞こえてきた。
ふたりの手がすっと離れる。
けれど、その間に流れた想いは、確かに本物だった。
刑事課の一角、供述確認を終えたあと、
担当の刑事が席を立ち、会議室から一時的に離れた。
室内に残されたのは、美香奈と、スーツ姿の神谷だけ。
わずかな静寂のなかで、神谷は確認するように口を開いた。
「……つらくなかったですか?供述中」
「……つらかったです。でも……ちゃんと話せて、少しだけ、気持ちが整理できました」
答える美香奈の声は静かだったが、明確な意思が宿っていた。
神谷は、ほんのわずかに眉を緩めた。
「……あなたの強さには、本当に頭が下がります」
「……でも、怖いことも、まだたくさんあります。
こうして話していても、ふと思い出す瞬間があって……体が冷たくなるんです」
その言葉に、神谷の指先がほんの一瞬だけ動いた。
けれど、すぐには何もしなかった。
ただ彼は、立ち上がってコートの内ポケットから、
小さなハンカチを取り出し、テーブルにそっと置いた。
「これは……?」
「前に、僕が使っていたものです。
いま、なにか冷たくなりそうなとき、これを手の中に握ってみてください」
美香奈は、驚いたようにハンカチを手に取り、
折り目の残るやわらかな布地をそっと見つめた。
「……いいんですか?」
「はい。持っていてくれると、僕も少し安心できます」
不器用な言葉のあとに、
ふと、美香奈の指先が神谷の手にわずかに触れた。
ほんの一瞬。
けれど、しっかりとした温度のある接触だった。
彼女は微笑みながら、そのまま目を逸らさずに言った。
「……ありがとうございました。
あなたがいてくれるだけで、心が落ち着くんです」
神谷は言葉を返す代わりに、そっと頷いた。
その瞬間、扉の向こうで誰かの足音が聞こえてきた。
ふたりの手がすっと離れる。
けれど、その間に流れた想いは、確かに本物だった。



