イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

サイレンの音が遠ざかるように響き、救急車は静かに走り出していた。

車内の照明は落とされ、天井に取り付けられた小さなランプだけが、ぼんやりと周囲を照らしている。
その淡い光の下で、美香奈は担架の上に静かに横たわっていた。

目を閉じたまま、細く浅い呼吸を繰り返している。
わずかに上下する胸元に、かすかな生命のリズムが宿っていた。
頬にはまだ水滴が残り、濡れた髪が首に張りついている。

救急隊員が毛布の端を整えながら、柔らかく声をかけた。

「暖房、少し上げますね……だいぶ冷えてます。髪も、もう少しだけ拭かせてください」

乾いたタオルに替え、濡れた髪をやさしく押さえ、ゆっくりと水分を取っていく。
その手つきに、急ぎや迷いはない。ただ彼女を労わる気持ちだけがにじんでいた。

神谷は彼女の左側に座り、毛布越しにそっと腕へ手を添える。
そのまま、冷えた皮膚を包み込むように、ゆっくりとさすっていった。

力を込めることなく、ただ、温もりが届くように――
緊張にこわばった身体が、少しでも安心にゆるむように。

「大丈夫です。もうすぐ病院に着きます。ちゃんと、あたたかいところで診てもらえますから」

その言葉に、美香奈の眉がわずかに寄った。
唇が震えたが、言葉にはならず、静けさの中でそのまま閉じられていた。

呼吸は浅いながらも、先ほどより幾分ゆるやかになっていた。
波のように不安定だったリズムが、徐々に落ち着きを取り戻しつつある。

神谷は手の動きを止めなかった。
何も語らず、ただ、そばにいるという事実だけで――彼女を支えるように。

目を閉じたままでも、孤独を感じることがないように。