イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

「橋口さん、今から担架に移りますね。
体を大きく動かさず、できるだけ楽に乗れるようにしますから、安心してください」

声をかけた救急隊員がもうひとりと目配せを交わし、
慎重に毛布ごと美香奈の体を包み込むようにして持ち上げる。

冷えきった体を保温しながら、ふわりと担架へ移されると、
そのわずかな動きだけでも、美香奈の呼吸が乱れた。

細く、不安定な吐息が唇から漏れ、かすかに震える胸が上下する。

「大丈夫ですよ。ゆっくり、吐いていきましょうね。
ふーっと、ゆっくり……焦らなくていいですよ」

担架の上、美香奈の肩に新しい毛布がかけられ、
濡れた髪にも乾いたタオルがそっと添えられる。

肩が小刻みに揺れながらも、彼女はかろうじて呼吸を保っていた。
苦しげな音は消えないが、その中にもわずかな落ち着きが混じりはじめていた。

「これから病院に向かいます。
ご安心ください、私たちがずっとそばにいます」

そう声をかける隊員の横で、もうひとりの隊員が神谷に近づき、静かに耳打ちする。

「付き添いについて、本人の意思を確認したいんですが……」

神谷は一瞬だけ美香奈の顔を見つめ、小さくうなずいた。

「……はい、わかりました」

隊員が担架のそばに戻り、静かに語りかける。

「美香奈さん、これから病院に行きます。
搬送には誰かが同乗できますが、希望される方がいれば、
お手を握って伝えてもらえますか?」

うっすらと、まぶたが開く。
震える指先がわずかに動き――やがて、隣に立つ神谷の手を探すように伸びてきた。

神谷はそっと手を取り、その小さな動きを包み込むように握り返す。

言葉は交わされない。
だが、その触れ合いだけで十分だった。

隊員は一瞬頷き、神谷へ視線を送る。

「同乗をお願いします。車内でも落ち着けるように配慮します」

「はい」

静かに答えると、神谷は美香奈の手を握ったまま、担架とともに歩き出した。

その小さな手の震えに、自分の体温がわずかでも届くようにと願いながら――。