呼吸のテンポがわずかに整いはじめたのを確認し、
もうひとりの救急隊員が静かに美香奈へと声をかけた。
「橋口さん、身体の状態を少しだけ確認しますね。
すぐに終わります。痛みがあれば教えてください」
返事はなかったが、まぶたがわずかに動き、濡れた睫毛が震えた。
隊員は仰向けの姿勢を崩さぬよう注意しながら、
極力揺らさずに、確認を始めていく。
首、鎖骨、肋骨、腹部、骨盤、両腕、両脚。
服の上から、素早く、それでいて決して乱暴にならない手つきで、
骨折や打撲の反応を探っていく。
そのたびに、美香奈の体が小さく反応した。
わずかにぴくりと動く肩や腕に気づいて、隊員は必ず声を添える。
「大丈夫、大丈夫……もう少しで終わりますよ」
外傷や変形は見られず、確認はすぐに終わった。
隊員は手を止め、落ち着いた声で続けた。
「胸の音を少しだけ聞かせてください。
冷たいですが、一瞬で終わります」
「……や……」
かすれた声が漏れたが、それは拒絶とも、承諾ともつかない微かな音だった。
隊員は一瞬だけ間を置き、それでも迷わずに動いた。
衣服の隙間から聴診器を差し入れ、左右の胸元に素早く器具を当てる。
冷たい金属が触れた瞬間、美香奈の体がぴくりと強ばった。
だが隊員はすぐに確認を終え、器具を外した。
「はい、終わりました。よく頑張りましたね」
毛布が肩口までかけ直され、濡れた髪の上からそっと押さえられる。
呼吸は、まだ浅さを残していたが、
先ほどまでの乱れは次第に落ち着きを取り戻しつつあった。
胸の上下する動きも、わずかに安定してきている。
神谷は何も言わず、ただそばでその様子を見守っていた。
目を伏せることも、顔をそらすこともせずに。
もうひとりの救急隊員が静かに美香奈へと声をかけた。
「橋口さん、身体の状態を少しだけ確認しますね。
すぐに終わります。痛みがあれば教えてください」
返事はなかったが、まぶたがわずかに動き、濡れた睫毛が震えた。
隊員は仰向けの姿勢を崩さぬよう注意しながら、
極力揺らさずに、確認を始めていく。
首、鎖骨、肋骨、腹部、骨盤、両腕、両脚。
服の上から、素早く、それでいて決して乱暴にならない手つきで、
骨折や打撲の反応を探っていく。
そのたびに、美香奈の体が小さく反応した。
わずかにぴくりと動く肩や腕に気づいて、隊員は必ず声を添える。
「大丈夫、大丈夫……もう少しで終わりますよ」
外傷や変形は見られず、確認はすぐに終わった。
隊員は手を止め、落ち着いた声で続けた。
「胸の音を少しだけ聞かせてください。
冷たいですが、一瞬で終わります」
「……や……」
かすれた声が漏れたが、それは拒絶とも、承諾ともつかない微かな音だった。
隊員は一瞬だけ間を置き、それでも迷わずに動いた。
衣服の隙間から聴診器を差し入れ、左右の胸元に素早く器具を当てる。
冷たい金属が触れた瞬間、美香奈の体がぴくりと強ばった。
だが隊員はすぐに確認を終え、器具を外した。
「はい、終わりました。よく頑張りましたね」
毛布が肩口までかけ直され、濡れた髪の上からそっと押さえられる。
呼吸は、まだ浅さを残していたが、
先ほどまでの乱れは次第に落ち着きを取り戻しつつあった。
胸の上下する動きも、わずかに安定してきている。
神谷は何も言わず、ただそばでその様子を見守っていた。
目を伏せることも、顔をそらすこともせずに。



