スマートフォンの画面に表示された「110」の数字。
それを押すのに、美香奈は三度指を置き直した。
(押して、早く……お願い……)
「……いち、いち……ぜろ」
小さな声で確認するようにつぶやいてから、
ようやく通話アイコンを押す。
コール音が鳴る。
それだけで、少しだけ呼吸が浅くなる。
けれど、通話はすぐにはつながらなかった。
スマートフォンの電波が、屋内の一部で弱まっていた。
(嘘、やめて、お願い……)
身体を押し付けるようにして、窓側へにじる。
ようやく、接続が安定し、コールの音が再び戻る。
「110番です。事件ですか?事故ですか?」
(つながった……!)
その声に、震える喉からかすれた声を絞り出す。
「た、たすけて……誰かが……家に……入ってきて……」
***
中原は、リビングをゆっくりと見回していた。
テーブルの上のグラス。
ソファのクッションの向き。
何もかもが、自分の記憶と“少しだけ違って”いた。
「……どこ、だ」
呟きながら、彼は足音を忍ばせて、
寝室のドアの前に立った。
ドアノブに、そっと指先をかける。
カチリ。
鍵は――かかっていた。
「へえ……そう来たか」
薄く笑ったその顔は、もはや人間の皮を被った獣のようだった。
それを押すのに、美香奈は三度指を置き直した。
(押して、早く……お願い……)
「……いち、いち……ぜろ」
小さな声で確認するようにつぶやいてから、
ようやく通話アイコンを押す。
コール音が鳴る。
それだけで、少しだけ呼吸が浅くなる。
けれど、通話はすぐにはつながらなかった。
スマートフォンの電波が、屋内の一部で弱まっていた。
(嘘、やめて、お願い……)
身体を押し付けるようにして、窓側へにじる。
ようやく、接続が安定し、コールの音が再び戻る。
「110番です。事件ですか?事故ですか?」
(つながった……!)
その声に、震える喉からかすれた声を絞り出す。
「た、たすけて……誰かが……家に……入ってきて……」
***
中原は、リビングをゆっくりと見回していた。
テーブルの上のグラス。
ソファのクッションの向き。
何もかもが、自分の記憶と“少しだけ違って”いた。
「……どこ、だ」
呟きながら、彼は足音を忍ばせて、
寝室のドアの前に立った。
ドアノブに、そっと指先をかける。
カチリ。
鍵は――かかっていた。
「へえ……そう来たか」
薄く笑ったその顔は、もはや人間の皮を被った獣のようだった。



