イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

「――ガチャ」

乾いた金属音が、はっきりと響いた。

今度は間違いなかった。
チェーンロックのかかっていない方の錠前が、外された音。

一瞬の空白ののち、扉の隙間が、ゆっくりと開きはじめた。

(――開いた!?)

美香奈の足が、とっさに動いた。
スマートフォンを胸に抱え、寝室のドアを音もなく閉め、
内側から鍵をかける。

窓の鍵も一度確認。
でも、そこは高層階。外には逃げられない。

(警察……通報……)

手は震えていた。
指先がスマートフォンを操作するのを拒んでくるような錯覚。

でも、やらなきゃ――
“今ここにいる誰か”から、自分を守るために。

***

そのころ――

中原は、開いたドアの隙間から、
ほんの一歩、音もなく足を踏み入れていた。

チェーンロックは、かかっていなかった。

彼の口元は、マスクの下で歪んだ笑みに変わっていた。

「……ただいま」

その声は、扉の向こうでは届かない。

けれど、玄関を越えた空間には――
静かな、破られたはずの日常が、今にも崩れ落ちようとしていた。