イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

「……出ない」

神谷は受話器を下ろすと、迷わず上着を手に取り立ち上がった。

デスクの端に置かれた警察手帳を胸ポケットに滑らせ、
署内を駆けるように抜けていく。

「橋口美香奈さんの居場所――すぐに警備手配をかけてください!
可能な限り、周囲の巡回強化を!」

刑事が頷き、無線で応答を始める。

神谷は、そのまま車両係の前でキーを受け取り、外へ出た。

(間に合え……頼む)

深夜に差しかかる街の光が、フロントガラスににじんでいた。

***

バスルームのドアを開けると、湯気とともに温かい空気が広がった。

髪をタオルで巻いたまま、美香奈はふとリビングへ向かう。

スマートフォンの画面には、光が残っていた。

「……神谷さん?」

表示された着信履歴は、“5回”。

(こんなに……?)

タオルを片手で押さえながら、
背筋にわずかな冷たさが走る。

(なにか、あったのかな……?)

胸元でスマートフォンを握りしめたまま、
静まり返った部屋の中に、わずかな“異変”の気配が忍び込んでいた。