イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

バスルームからは、湯の流れる音と、
静かな音楽がスマートスピーカーから微かに流れていた。

美香奈は、ぬるめの湯でゆっくりと肩をほぐしていた。

(今日は、疲れた……)

シャワーの温度と水音に包まれ、
わずかな安心の中に身を沈める。

リビングのテーブル。
その上に置かれたスマートフォンは、
画面を明滅させながら、静かにバイブレーションを繰り返していた。

“神谷涼介”

けれど、美香奈の耳には届かない。

***

そのころ。

マンション裏手のフェンスに、
ゆっくりと影が近づいていた。

中原孝志。
黒いパーカーのフードを深くかぶり、顔は防寒マスクで隠されている。

手には、何かの作業工具を握っていた。

物音を立てぬよう、彼はフェンスの隙間から身をすり抜け、
建物の隅にある非常階段の陰に身を潜める。

何度も確認していた死角。
防犯カメラの向きと死角の交差点。
光の届かぬ、その場所に、彼は足を踏み入れた。

視線の先には――
かつて自分が合鍵で出入りしていた“あの部屋”があった。