イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

「……あれ?」

玄関の鍵を開けて中に入った瞬間、美香奈は小さく首をかしげた。

靴を脱ぎかけた足を止め、視線を落とす。

玄関マット。
いつもぴったり敷かれていたはずの角が、わずかに浮いている。

(朝、こんな風になってたっけ?)

マットを戻し、鞄を棚の上に置こうとしたそのとき――
ふと、ポストの投函口が少し開いたままになっているのに気づいた。

(……閉め忘れた?)

指でそっと押してみると、音もなくカチリと閉まった。

小さな異変。
けれど、その“ささやかさ”が逆に不安を煽る。

室内に入り、ドアをロックしてからチェーンも確認する。

何もおかしな点はない。
けれど、どこか落ち着かない。

「……気のせいだよね」

誰に言うでもなくつぶやき、リビングの明かりをつける。

テレビをつけて音を流すと、
ようやく少しだけ、心が戻ってきた気がした。

けれど――

その玄関の向こうに、
“再びその扉を開こうとする男”が近づいているとは、
このとき、まだ知る由もなかった。