イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

でも、彼の言葉には、不思議と嫌な感じはしなかった。

「ありがとうございます。……気をつけて帰ります」

美香奈がそう答えると、彼は無言でうなずき、踵を返す。

その背中が交番の方角へ向かって歩き出したとき、少し遅れてもう一人、制服姿の若い警官が追いかけるように声をかけた。

「神谷さん、待ってくださいよ。地図、持って行かなくていいんすか?」

“神谷”という名前が、そのまま耳に残った。

(神谷さん……)

それだけのことなのに、なぜか心の中でその名前が、すっと染み込んでいく気がした。

無愛想で、何も話さない人。
けれど、ほんの少しだけ――怖くなかった。

その背中が、角を曲がって見えなくなるまで、美香奈は動けなかった。