控えめに開いたガラス扉の奥から、
なつかしい空気と、コピー機の低い音が耳に届いた。
美香奈は、ゆっくりとその事務所の中に足を踏み入れた。
受付にいた女性事務員が目を丸くし――
すぐに、微笑を向けて小さく頭を下げた。
「……おかえりなさい」
その言葉が、胸の奥に静かに染み込んでくる。
応接室に案内されると、
真木弁護士がゆっくりと席を立ち、美香奈の前に立った。
「無理はしていないか?」
「はい。……まだ怖さはありますけど、
気持ちは少しずつ、落ち着いてきました」
真木は頷き、黙ってソファをすすめる。
ふたりが向かい合って腰を下ろしたあと、
美香奈は少し息を整え、ゆっくりと言葉をつないだ。
「今回のことで……自分でも意外だったんです。
こんなに怖い思いをするとは思っていなかったし、
自分が“弱くなっていく”感じにも、最初は戸惑いました」
真木は静かに彼女の言葉を待っていた。
「でも……この経験を、“ただの被害”で終わらせたくない。
同じように苦しむ人に寄り添えるなら、
法律を学んできた意味も、もう一度見つけられる気がして」
そう言った彼女の目には、まだかすかな揺れがあった。
けれど、その奥には確かに、強い意志の光が宿っていた。
真木は、それを見逃さなかった。
「……それは、とても立派な決意だ。
そして、その意志に応えられる場所が、きっとここにはある。
まずは一歩ずつ――君のペースで戻っておいで」
その言葉に、美香奈は深く頷いた。
この場所に戻ってきてよかった。
そう、静かに思える時間だった。
なつかしい空気と、コピー機の低い音が耳に届いた。
美香奈は、ゆっくりとその事務所の中に足を踏み入れた。
受付にいた女性事務員が目を丸くし――
すぐに、微笑を向けて小さく頭を下げた。
「……おかえりなさい」
その言葉が、胸の奥に静かに染み込んでくる。
応接室に案内されると、
真木弁護士がゆっくりと席を立ち、美香奈の前に立った。
「無理はしていないか?」
「はい。……まだ怖さはありますけど、
気持ちは少しずつ、落ち着いてきました」
真木は頷き、黙ってソファをすすめる。
ふたりが向かい合って腰を下ろしたあと、
美香奈は少し息を整え、ゆっくりと言葉をつないだ。
「今回のことで……自分でも意外だったんです。
こんなに怖い思いをするとは思っていなかったし、
自分が“弱くなっていく”感じにも、最初は戸惑いました」
真木は静かに彼女の言葉を待っていた。
「でも……この経験を、“ただの被害”で終わらせたくない。
同じように苦しむ人に寄り添えるなら、
法律を学んできた意味も、もう一度見つけられる気がして」
そう言った彼女の目には、まだかすかな揺れがあった。
けれど、その奥には確かに、強い意志の光が宿っていた。
真木は、それを見逃さなかった。
「……それは、とても立派な決意だ。
そして、その意志に応えられる場所が、きっとここにはある。
まずは一歩ずつ――君のペースで戻っておいで」
その言葉に、美香奈は深く頷いた。
この場所に戻ってきてよかった。
そう、静かに思える時間だった。



