イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

スマートフォンを手に取った美香奈は、
深呼吸をひとつしてから、連絡先の画面を開いた。

着信先は、職場――「真木法律事務所」。

コールが二度鳴ったあと、なじみのある穏やかな声が受話器越しに届いた。

『はい、真木です』

「……あの、橋口です。橋口美香奈。ご無沙汰してます」

『ああ、橋口さん。よかった……声が聞けて安心したよ』

その言葉だけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。

「ご迷惑、ご心配をおかけして……。
でも、少しだけ気持ちが落ち着いてきたので……
無理のない範囲で、仕事にも、戻れたらと」

電話口の向こうで、わずかな沈黙があり――
すぐに、深く包み込むような声が返ってきた。

『そうか。……焦らなくていい。
でも、その気持ちがあるなら、私はいつでも歓迎するよ。
ここは、君の居場所だ』

美香奈は、電話を切ったあと、少しだけ笑った。

ほんの数日前には考えられなかった言葉を、
自分の口から発せられたことが、どこか信じられなかった。



そのころ。
神谷の携帯に、刑事課からの着信が入っていた。

『例の映像、再確認したがな――面白いもんが見えてきた。
例の男、以前にも“別の棟”に出入りしてた形跡がある。
同じ管理会社の巡回担当らしい』

神谷の瞳に、鋭い光が宿る。

「……なるほど。じゃあ次は、直接確認ですね」

捜査線が、確かに“ひとつ”に絞られようとしていた。