イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

車の窓から差し込む夕暮れの光が、街をオレンジに染めていた。

神谷はハンドルを握る手を少し緩め、
信号待ちのあいだ、静かに目を閉じた。

(……連絡、してもいいですか)

その言葉が、耳の奥でゆっくりと反芻される。

あの声。あの表情。
ほんの少し迷って、けれど確かに“自分”を選んでくれたこと。

職務として、当然のこと。
誰かを守る立場にいる者として、当たり前の距離感。

……そう思っていたはずなのに。

(俺だけじゃなくても、よかったはずだ)

でも、あの時、あの場で――
彼女が頼ったのは、他の誰でもなく、自分だった。

信号が青に変わる。

神谷はゆっくりとアクセルを踏み込み、車を進めた。



そのころ、美香奈は新しい部屋のソファに座っていた。

カーテンの隙間から、夜の気配が忍び寄ってくる。

室内は静かで、どこも整っていた。
でも、心のどこかには、まだ“他人の部屋”という違和感が残っていた。

ふと、手元のスマートフォンに視線を落とす。

登録されたばかりの連絡先――
「神谷涼介」の文字に、指がそっと伸びる。

しばらく見つめたあと、
彼女は画面を静かに閉じた。

“今じゃない”――
そう、自分に言い聞かせるように。

けれどその胸の奥には、
確かに、誰かに繋がりたいという想いが小さく灯っていた。