車の窓から差し込む夕暮れの光が、街をオレンジに染めていた。
神谷はハンドルを握る手を少し緩め、
信号待ちのあいだ、静かに目を閉じた。
(……連絡、してもいいですか)
その言葉が、耳の奥でゆっくりと反芻される。
あの声。あの表情。
ほんの少し迷って、けれど確かに“自分”を選んでくれたこと。
職務として、当然のこと。
誰かを守る立場にいる者として、当たり前の距離感。
……そう思っていたはずなのに。
(俺だけじゃなくても、よかったはずだ)
でも、あの時、あの場で――
彼女が頼ったのは、他の誰でもなく、自分だった。
信号が青に変わる。
神谷はゆっくりとアクセルを踏み込み、車を進めた。
*
そのころ、美香奈は新しい部屋のソファに座っていた。
カーテンの隙間から、夜の気配が忍び寄ってくる。
室内は静かで、どこも整っていた。
でも、心のどこかには、まだ“他人の部屋”という違和感が残っていた。
ふと、手元のスマートフォンに視線を落とす。
登録されたばかりの連絡先――
「神谷涼介」の文字に、指がそっと伸びる。
しばらく見つめたあと、
彼女は画面を静かに閉じた。
“今じゃない”――
そう、自分に言い聞かせるように。
けれどその胸の奥には、
確かに、誰かに繋がりたいという想いが小さく灯っていた。
神谷はハンドルを握る手を少し緩め、
信号待ちのあいだ、静かに目を閉じた。
(……連絡、してもいいですか)
その言葉が、耳の奥でゆっくりと反芻される。
あの声。あの表情。
ほんの少し迷って、けれど確かに“自分”を選んでくれたこと。
職務として、当然のこと。
誰かを守る立場にいる者として、当たり前の距離感。
……そう思っていたはずなのに。
(俺だけじゃなくても、よかったはずだ)
でも、あの時、あの場で――
彼女が頼ったのは、他の誰でもなく、自分だった。
信号が青に変わる。
神谷はゆっくりとアクセルを踏み込み、車を進めた。
*
そのころ、美香奈は新しい部屋のソファに座っていた。
カーテンの隙間から、夜の気配が忍び寄ってくる。
室内は静かで、どこも整っていた。
でも、心のどこかには、まだ“他人の部屋”という違和感が残っていた。
ふと、手元のスマートフォンに視線を落とす。
登録されたばかりの連絡先――
「神谷涼介」の文字に、指がそっと伸びる。
しばらく見つめたあと、
彼女は画面を静かに閉じた。
“今じゃない”――
そう、自分に言い聞かせるように。
けれどその胸の奥には、
確かに、誰かに繋がりたいという想いが小さく灯っていた。



