「……それじゃ、俺はそろそろ戻りますね」
神谷が時計をちらりと見て、そう告げた。
その言葉に、美香奈はわずかに肩を動かした。
新しい部屋。
優しさと配慮に満ちた空間。
でも、ここには“誰もいない夜”が訪れる。
靴音も話し声もない場所で、一人になる――
その現実が、ゆっくりと胸の奥に沈んでいく。
神谷が玄関へ向かおうとしたそのとき、
美香奈は思わず声をかけていた。
「……あの」
神谷が振り返る。
彼女はすこしだけ視線を逸らしながら、ためらうように口を開いた。
「もし、夜……不安になったりしたら、連絡……しても、いいですか?」
その声は震えてはいなかった。
けれど、かすかな迷いと、それ以上の“信頼”がにじんでいた。
神谷は一瞬だけ驚いたようにまばたきをしたあと、
すぐに、静かに、深く頷いた。
「もちろん。いつでもどうぞ」
その一言に、美香奈は、言葉ではなく、小さく頷いて応えた。
玄関のドアが開き、夕方の光が差し込む。
けれど、その背中が完全に見えなくなる前に――
ほんのわずかに、彼女の気配が、彼を引き止めていた。
神谷が時計をちらりと見て、そう告げた。
その言葉に、美香奈はわずかに肩を動かした。
新しい部屋。
優しさと配慮に満ちた空間。
でも、ここには“誰もいない夜”が訪れる。
靴音も話し声もない場所で、一人になる――
その現実が、ゆっくりと胸の奥に沈んでいく。
神谷が玄関へ向かおうとしたそのとき、
美香奈は思わず声をかけていた。
「……あの」
神谷が振り返る。
彼女はすこしだけ視線を逸らしながら、ためらうように口を開いた。
「もし、夜……不安になったりしたら、連絡……しても、いいですか?」
その声は震えてはいなかった。
けれど、かすかな迷いと、それ以上の“信頼”がにじんでいた。
神谷は一瞬だけ驚いたようにまばたきをしたあと、
すぐに、静かに、深く頷いた。
「もちろん。いつでもどうぞ」
その一言に、美香奈は、言葉ではなく、小さく頷いて応えた。
玄関のドアが開き、夕方の光が差し込む。
けれど、その背中が完全に見えなくなる前に――
ほんのわずかに、彼女の気配が、彼を引き止めていた。



