休憩後、室内に戻った美香奈の前に、神谷が穏やかに告げた。
「ひとつ、お伝えしておきたいことがあります」
彼女はすこし緊張した面持ちで顔を上げた。
「自宅ですが……事件現場として、しばらくのあいだ立ち入りが制限されます。
つまり――今日、明日にでも戻ることは難しいと思ってください」
言葉を選びながらも、神谷の声には曖昧さがなかった。
美香奈は、わかっていたつもりだったその現実に、
改めて小さく息を呑んだ。
「……そう、ですよね。証拠が……」
その言葉にうなずいた神谷は、続ける。
「でも、安心してください。
あなたの上司――真木弁護士が、所有しているマンションの空き部屋を提供したいと申し出てくれました。
通勤圏内で、立地も問題ありません。安全確認はこちらでも行います」
美香奈の目が、わずかに大きく見開かれた。
「……真木先生が……?」
彼女の口からこぼれた声には、驚きと同時に、じんわりとした温かさが混じっていた。
「はい。あなたのことを、とても心配されていました。
“何かできることがあれば、力になりたい”と、はっきり言っていましたよ」
美香奈はしばらく黙っていた。
その沈黙には、遠慮と、申し訳なさと――
でも確かに、感謝の気持ちがゆっくりと満ちていく時間が流れていた。
やがて、静かに頷き、口を開いた。
「……お願いします。
いまの私には、それがいちばん、安心できそうな気がします」
その一言は、小さな声ながらも、
彼女が“次の一歩”を踏み出そうとしている証だった。
「ひとつ、お伝えしておきたいことがあります」
彼女はすこし緊張した面持ちで顔を上げた。
「自宅ですが……事件現場として、しばらくのあいだ立ち入りが制限されます。
つまり――今日、明日にでも戻ることは難しいと思ってください」
言葉を選びながらも、神谷の声には曖昧さがなかった。
美香奈は、わかっていたつもりだったその現実に、
改めて小さく息を呑んだ。
「……そう、ですよね。証拠が……」
その言葉にうなずいた神谷は、続ける。
「でも、安心してください。
あなたの上司――真木弁護士が、所有しているマンションの空き部屋を提供したいと申し出てくれました。
通勤圏内で、立地も問題ありません。安全確認はこちらでも行います」
美香奈の目が、わずかに大きく見開かれた。
「……真木先生が……?」
彼女の口からこぼれた声には、驚きと同時に、じんわりとした温かさが混じっていた。
「はい。あなたのことを、とても心配されていました。
“何かできることがあれば、力になりたい”と、はっきり言っていましたよ」
美香奈はしばらく黙っていた。
その沈黙には、遠慮と、申し訳なさと――
でも確かに、感謝の気持ちがゆっくりと満ちていく時間が流れていた。
やがて、静かに頷き、口を開いた。
「……お願いします。
いまの私には、それがいちばん、安心できそうな気がします」
その一言は、小さな声ながらも、
彼女が“次の一歩”を踏み出そうとしている証だった。



