廊下には、静かな空調の音だけが漂っていた。
休憩に入ったタイミングで、神谷は刑事とともに室外に出た。
ふたりは自販機の横に立ち、紙コップのコーヒーを手にしていた。
「……君が同席してくれて、助かったよ」
そう口にしたのは、さっきまで聴取を進行していた刑事だった。
「彼女、ああいう状況で、自分の言葉をちゃんと出せるって……なかなかない。
たぶん、“君だから”なんだろうな」
神谷は答えなかった。
紙コップを見つめたまま、ゆっくりと、ひと息。
「……俺にはわかりません。
でも、彼女が俺を選んでくれたなら――それに応えるしかないと思ってます」
刑事はふっと笑った。
「堅いな。でも、そういうところが向いてるのかもな、こういう仕事」
ふたりの間に、わずかに空気が和らいだ。
その後、刑事が小さく口を引き締めたようにして言った。
「ちなみに、現場……彼女の部屋のことだけど。
今後しばらくは鑑識が入る。本人が戻るには、ちょっと時間がかかると思う」
神谷は、その言葉に思わず顔を上げた。
(帰れない? じゃあ……彼女は、どこに)
刑事は続けた。
「彼女の家族構成はこれから確認だけど、
誰か頼れる人間がいれば、そちらに一時避難という形で進めると思う」
神谷は頷きながらも、その内心では別の考えが浮かび始めていた。
“もし、彼女がすぐに帰れる場所を持っていなかったら――”
そのとき、ふと脳裏に浮かんだのは、
以前、彼女の勤務先として記録にあった「真木法律事務所」の名前だった。
(……職場の上司とか、そういう人が……)
神谷の胸に、小さな希望と同時に、
“警察官として何ができるか”という葛藤が再び芽生え始めていた。
休憩に入ったタイミングで、神谷は刑事とともに室外に出た。
ふたりは自販機の横に立ち、紙コップのコーヒーを手にしていた。
「……君が同席してくれて、助かったよ」
そう口にしたのは、さっきまで聴取を進行していた刑事だった。
「彼女、ああいう状況で、自分の言葉をちゃんと出せるって……なかなかない。
たぶん、“君だから”なんだろうな」
神谷は答えなかった。
紙コップを見つめたまま、ゆっくりと、ひと息。
「……俺にはわかりません。
でも、彼女が俺を選んでくれたなら――それに応えるしかないと思ってます」
刑事はふっと笑った。
「堅いな。でも、そういうところが向いてるのかもな、こういう仕事」
ふたりの間に、わずかに空気が和らいだ。
その後、刑事が小さく口を引き締めたようにして言った。
「ちなみに、現場……彼女の部屋のことだけど。
今後しばらくは鑑識が入る。本人が戻るには、ちょっと時間がかかると思う」
神谷は、その言葉に思わず顔を上げた。
(帰れない? じゃあ……彼女は、どこに)
刑事は続けた。
「彼女の家族構成はこれから確認だけど、
誰か頼れる人間がいれば、そちらに一時避難という形で進めると思う」
神谷は頷きながらも、その内心では別の考えが浮かび始めていた。
“もし、彼女がすぐに帰れる場所を持っていなかったら――”
そのとき、ふと脳裏に浮かんだのは、
以前、彼女の勤務先として記録にあった「真木法律事務所」の名前だった。
(……職場の上司とか、そういう人が……)
神谷の胸に、小さな希望と同時に、
“警察官として何ができるか”という葛藤が再び芽生え始めていた。



