イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

神谷の言葉が、ゆっくりと室内にしみ込んでいった。

否定も、慰めもない。
ただ、目の前にある“事実”と“今ここにいる自分”を、まっすぐに肯定してくれた声だった。

美香奈は少しだけうつむき、
布団代わりの膝掛けを握る手を、そっとゆるめた。

そして、かすかに視線を上げた。

「……怖いけど、思い出せること……あるかもしれません」

その言葉に、神谷も、刑事も、動きを止める。

「逃げたとき……というか、私が大きな音を立てて、
誰かが廊下の向こうから走ってきたのがわかって――
その瞬間、犯人が非常階段のほうに向かって逃げたんです」

目を閉じ、記憶を探るようにして、彼女は続けた。

「顔は見えませんでした。
でも、走り去るとき……金属みたいな、カチャって音が、少しだけ――」

刑事が、ペンを走らせながら問いかける。

「カチャ、というのは……鍵のような?」

「……たぶん。扉の外で何かを扱ったような音でした。
とても短くて、でも確かに耳に残ってて……」

神谷が頷きながら視線を交わすと、刑事は目配せで記録の内容を伝えてくる。

「ありがとうございます。貴重な手がかりです」

その言葉に、美香奈は小さくうなずいた。

怖さはまだ消えていない。
けれど、少しずつ、自分の言葉が誰かの“力”になっていく感覚が――
彼女の中に、灯りをともしていた。