イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

呼吸が少しずつ整っていくにつれ、
聴取室の空気も、再び穏やかな静けさを取り戻していた。

膝にかけられた毛布の感触。
喉を通る水の冷たさ。
それらひとつひとつが、現実の感覚として、美香奈を“ここ”へと引き戻してくれる。

刑事は、それ以上の質問を急がず、
神谷もまた、彼女の横でただ静かにその時を待っていた。

やがて、美香奈が、視線を落としたままぽつりとつぶやく。

「……どうして、私だったんでしょう」

誰にともなく投げかけたような声だった。

「何かした覚えもないし、特別目立つようなこともしてないのに……
なのに、あんなふうに――」

言葉の端に、恐怖とはまた別の種類の感情が混ざっていた。

混乱。戸惑い。
そして、“選ばれてしまった”ことへの無力感。

神谷は、それを否定しようとはしなかった。

「……誰が、何の目的で、っていうのは、いまはまだはっきりしません。
でも、そういう理不尽なことが起きるからこそ、僕たちは動いてるんです」

ゆっくりと、美香奈のほうを向き、静かに言葉を続けた。

「“あなたじゃない誰か”だったかもしれない。
でも、あなたが狙われたという事実は、もう変えられない。
だから、守ります。――必ず」

その言葉には、職務としての責任と、
それを超えた何かが、同時に宿っていた。