イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

「……その夜、仕事を終えて、家に帰ってきたんです。
最寄り駅からの道は明るくて、特に異変はなかったと思います」

美香奈は、ゆっくりと思い出すように語り出した。

「でも、玄関の前に立ったとき……ふと、背中がひやっとして」

郵便受けの金属音が、どこか遠くで鳴った気がした。
けれど周囲に人の姿はなく、何かの錯覚かもしれないと、すぐに鍵を取り出した。

「いつも通り、鍵を差して、回して。
扉を開けた瞬間でした……誰かが、外から一気に押し込んできたんです」

声がそこで少し震える。

「腕を掴まれて、無理やり中に引きずり込まれて。
口を塞がれて、声も出せなくて……何が起きてるのかわからないまま、ただ――」

彼女の手が、膝の上でわずかに握られる。

神谷が、そっとその手に視線を落とした。

「……怖かったです。抵抗しようと必死で、でも相手は力が強くて……」

刑事が記録のペンを一度止め、視線をあげた。
しかし、神谷が静かに目配せすると、彼は無言で頷き、再び筆記に戻る。

美香奈は、かすかな震えのなかでも、言葉をつないでいた。