イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

翌日。
神谷は、病院から一時退院の許可を得た美香奈とともに、署の事情聴取室へ入った。

事件についての正式な供述を取る必要がある。
そのために、刑事課の担当者が同席し、手順に沿って聴取は進められることになっていた。

室内には大きなテーブルと二脚の椅子。
明るすぎない照明が、神経をすこし静めてくれるような空間だった。

だが、美香奈の手のひらは、椅子に座った瞬間からじんわりと汗ばんでいた。

ペンを握る手が、小刻みに震えている。

刑事が質問を始める。

「それでは、橋口さん。事件当日の状況について、思い出せる範囲で構いませんので――」

その声が終わらないうちに、美香奈の胸が上下に大きく動いた。

視線がふらつき、息を吸う音が荒くなる。

「……っ、……すみません……」

神谷がすぐに反応した。

「大丈夫です。美香奈さん、無理しなくていい」

椅子を引き、彼女の隣へそっと腰を下ろす。

「今はゆっくり呼吸しましょうね。吸って……吐いて。リズムに合わせて」

彼女の肩にやさしく手を添え、トントン、と落ち着いたテンポで叩く。

「焦らなくていい。ここは安全です。深呼吸、できる範囲で……そう、いいですよ」

刑事はその様子を見て、手元の書類をそっと伏せ、口を閉じた。

室内に、神谷の声と、美香奈の震える吐息だけが流れていた。