神谷は立ったまま一瞬だけ迷い、
その後、ベッド脇の丸椅子をそっと引いて腰を下ろした。
「……部屋、寒くなかったですか?」
そう尋ねる声は、ごく自然で、あえて力を抜いた調子だった。
美香奈は、小さく首を横に振った。
「大丈夫……です。ちゃんと、毛布も……」
「そうですか。よかった。あの毛布、交番の備品なんですけど――意外とあったかいんですよ」
ぽつりと笑うような口調に、
美香奈もほんの少しだけ、かすかに目を細めた。
そのわずかな変化を、神谷は見逃さなかった。
けれどその笑みの奥に、昨夜の影がまだ淡く残っていることも、
彼は察していた。
「無理に思い出さなくていいです。
何を見たとか、何をされたとか……いま、口に出す必要はないですから」
その言葉に、美香奈は驚いたように神谷を見た。
「……でも、捜査が……」
「いま話すより、ちゃんと落ち着いてから。
俺だけじゃなく、刑事課の人間が聞くべきときが来たら、改めてお願いします」
静かな肯定だった。
“強く引き出すこと”と、“寄り添うこと”は、まったく違う。
そう理解している人の声だった。
その後、ベッド脇の丸椅子をそっと引いて腰を下ろした。
「……部屋、寒くなかったですか?」
そう尋ねる声は、ごく自然で、あえて力を抜いた調子だった。
美香奈は、小さく首を横に振った。
「大丈夫……です。ちゃんと、毛布も……」
「そうですか。よかった。あの毛布、交番の備品なんですけど――意外とあったかいんですよ」
ぽつりと笑うような口調に、
美香奈もほんの少しだけ、かすかに目を細めた。
そのわずかな変化を、神谷は見逃さなかった。
けれどその笑みの奥に、昨夜の影がまだ淡く残っていることも、
彼は察していた。
「無理に思い出さなくていいです。
何を見たとか、何をされたとか……いま、口に出す必要はないですから」
その言葉に、美香奈は驚いたように神谷を見た。
「……でも、捜査が……」
「いま話すより、ちゃんと落ち着いてから。
俺だけじゃなく、刑事課の人間が聞くべきときが来たら、改めてお願いします」
静かな肯定だった。
“強く引き出すこと”と、“寄り添うこと”は、まったく違う。
そう理解している人の声だった。



