内線を受けて、神谷は短く返答したあと、電話を切った。
傍らの刑事課係長が、机の端に肘をつきながら顔を上げる。
「……橋口さんが君を名指ししたらしい。
病院からも“要望として尊重したい”と伝えがあった」
神谷は小さく頷いた。
「面識があるとは聞いていたが、交番勤務の君をここで希望するとはな……
何か理由でも?」
質問はやわらかだったが、少しだけ探るような気配を帯びていた。
神谷は視線を落とし、考えるふうに数秒沈黙したあと、静かに答える。
「……現場に最初に立ち会って、何度か話もしました。
安心できる相手がほしいと思ったのかもしれません」
それが本当の理由かどうか、神谷自身にもわからなかった。
だが、少なくとも――
彼女の震える手を握った夜のことは、
確かに、どちらの記憶にも強く残っているはずだった。
係長は、ふっと小さく息をついた。
「……わかった。無理に追及するつもりはない。
彼女の状態次第で聞き取りが必要になるが、君が行ってくれるならそれでいい」
神谷は敬礼のかたちで軽く頭を下げ、そのまま立ち上がる。
書類の束を手早く整理し、ジャケットを手に取った。
足はすでに、次に向かう場所に向かっていた。
傍らの刑事課係長が、机の端に肘をつきながら顔を上げる。
「……橋口さんが君を名指ししたらしい。
病院からも“要望として尊重したい”と伝えがあった」
神谷は小さく頷いた。
「面識があるとは聞いていたが、交番勤務の君をここで希望するとはな……
何か理由でも?」
質問はやわらかだったが、少しだけ探るような気配を帯びていた。
神谷は視線を落とし、考えるふうに数秒沈黙したあと、静かに答える。
「……現場に最初に立ち会って、何度か話もしました。
安心できる相手がほしいと思ったのかもしれません」
それが本当の理由かどうか、神谷自身にもわからなかった。
だが、少なくとも――
彼女の震える手を握った夜のことは、
確かに、どちらの記憶にも強く残っているはずだった。
係長は、ふっと小さく息をついた。
「……わかった。無理に追及するつもりはない。
彼女の状態次第で聞き取りが必要になるが、君が行ってくれるならそれでいい」
神谷は敬礼のかたちで軽く頭を下げ、そのまま立ち上がる。
書類の束を手早く整理し、ジャケットを手に取った。
足はすでに、次に向かう場所に向かっていた。



