イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

壁に貼られた写真のうちの一枚――
それは、美香奈がエコバッグを肩にかけ、交差点で信号待ちをしているところだった。

スカートの裾が風に揺れている。表情は見えない。
けれど、男には見えていた。想像の中で、何度も繰り返してきたその姿。

「なあ、俺のこと見てただろ? 気づいてたろ?」

ぼそりと呟く声に、誰も答えない。
部屋の中にあるのは、スマホ、写真、そして、自分だけ。

けれど男は、それで十分だった。
彼女は自分を“見た”――その一点だけで、すべての妄想が現実になった。

「……また、会いに行こう」

その声は、どこまでもやさしく、どこまでも狂っていた。

「会って、ちゃんと話したら、きっとわかるよな……」

男は呟きながら、写真の一枚に指を伸ばした。
美香奈が、カフェの窓際でコーヒーを飲んでいる姿を撮ったものだ。撮影は外から。彼女はまったく気づいていない。

「こうやって、ひとりでいる時間が多いってことは、寂しいんだろ。俺がそばにいれば、きっと安心する」

写真の端が指の跡でしわになっていく。だが男は気にしない。
ただじっと、美香奈の顔を見つめていた。

「家も、覚えたしな。昼間にもう一回、近くまで行ってみるか……」

そう言って笑ったその表情には、常軌を逸した愛情だけが浮かんでいた。

「大丈夫、怖がらせたりしない。優しくするよ」

それは“相手のため”の言葉ではなかった。
“自分が望む形”に、すべてを押し込めるための言葉だった。