ひとつ、ふたつ、ひみつ。

またそれ、言った。

私はムッと唇を結ぶ。

「真尋くんの世界では、誰にでもすぐそういうこと言うの?」

「人によるんじゃないかな。俺は、こまりにしか言わないけど」

「…………はぇ?」

『はい?』と、『え?』が混ざって、虫の名前を言っただけみたいになった。

「だから、俺はこまりにしか言ったことないって」

「うう、嘘だぁ……」

「嘘じゃないよ。可愛いって思った時にしか、可愛いなんて言わないし」

いや、嘘だよ、絶対。

そんな人が、こんなスラスラと軟派(なんぱ)な言葉を口にするわけないもん。
キスがあいさつの人だし。

私が家主だからって、ご機嫌とりなんじゃないの?
そんなことしなくても、追い出したりしないのに。

だから、だから。
ドキドキしちゃ、だめなんだってば。