ひとつ、ふたつ、ひみつ。

「車とか電車っていうのは、移動するための乗り物だよ。ここに歩いてくるまでにも、車は何台も走ってたでしょ?」

「えっ、あのキャスター付きで動いてた機械に、人が乗ってたの?」

キャスター付きの機械て。
タイヤの概念、ないってこと?

「そう。人が運転して、移動してるんだよ。電車は、んー……、こういうの」

電車を知らない人に、一から口で説明をするのがこんなに難しいなんて。

私は、満員電車をスマホで検索して、手っ取り早く画像を見せた。

「うわ、人がいっぱいだ。この人たちが、この箱を動かしてるんだな」

箱。

「違うよ、運転してるのは車掌さん。この人たちは、お客さんだから乗ってるだけ。飛行機は、人を乗せて空を飛ぶものだよ」

「へぇ。こっちの人も、空を飛ぶんだ。俺と一緒に空にワープした時は、こまり怖がってたのに」

「私、生身で空飛んだことないもん……」

こんな日本語、初めて使った。

「すごいな。日本じゃないみたいだ」

それは、こっちのセリフなんだけど。

見慣れた、当たり前の乗り物を知らない人なんて初めてで、反応が全部新鮮に感じる。
なんだか、ずっと可愛い。

「飛行機はむずかしいけど、電車なら簡単に乗れるよ。今度、一緒に乗ってみる?」

「本当? ありがとう、こまり」

「ひえ!?」

繋いだ手をグイッと引かれて、そのまま抱きしめられて、おかしな声が出た。