「こまりー、学校行くぞ、こまり」

「はいはいはーい! 今行くってば!」

ピンポンピンポンピンポンピンポンッと、近所迷惑なくらいの玄関のチャイム音と共に、聞きなじみのある声が聞こえる。

「こーまーりー」

「もー、はぁーい!」

バタバタと慌てて部屋の中を走り回り、寝ぐせもそのままに、玄関を開ける。

「遅い。70点」

なんの点数?

「おはよう、あっくん。半分以上付けてくれて、ありがと。なんの点か分かんないけど」

マンション503号室から一歩踏み出すと、504号室の幼なじみが出迎えてくれた。
それは、いつも通り。

「もう。あっくん、いつも先に行っててくれてもいいって言ってるのに」

「ダメだ。お前なんか放っておいたら、毎日一時間目出れないだろ」

「そんなことないよ。せいぜい、朝読間に合わないくらいで済むもん」

「アホ。うちの家は、全員でお前のこと任されてんだからな。それもダメ」

昨日からはじまった、ひとり暮らし。
少し落ち着かなくて、スマホでゲームをしていたら、いつの間にか夜ふかししてしまって。

その結果、いつもより寝坊。
当然、起こす人もいない。