ひとつ、ふたつ、ひみつ。

「こーまーりっ。おはよ!」

「わ、びっくりした。イズミちゃんおはよう」

背後からぎゅうっと抱きついてきた友達に、胸に手を当てながらあいさつを返す。

「長岡くんも、おはよ。ねーねー、こまりぃ。今日ね、サークルの飲み会があるんだって。こまりも行こうよぉ」

「え? えーと、私は……」

「悪い。こいつ、俺と先約あるから」

イズミちゃんから引き剥がすように、あっくんが私の腕を自分の方へ引き寄せる。

「もー、長岡くんのそれ、ズルいよ。こまり、今度は絶対ね!」

「うん、ごめんね」

ぷくっと可愛らしく頬を膨らませるイズミちゃんを見送って、あっくんは自然と私の腕を離した。

「ごめんね、あっくん。約束なんてしてなかったのに、合わせてくれて。イズミちゃんたちの飲み会って、私結構苦手で……」

「俺は、その“約束”を本当にしてもいいけど」

「ん? いいよ。今日の夜はバイトもないし。あっくんが前に行きたがってたラーメン屋、せっかくだから行こうよ」

「色気ねーなぁ」

「え?」

「なんでもない。じゃあ、夜にな」

ポンと私の頭に手を置いてから、あっくんはすぐに背を向けた。

──あれから月日は流れて、私たちは大学生になった。
真尋くんには、一度も会えていない。