ひとつ、ふたつ、ひみつ。

「真尋くん……?」

ドアをそっと開けて、部屋の中を覗き込む。

何の音も聞こえない。
驚くほどに、冷たい空気が漂っている。冬の気温を、そのまま部屋の中に持ち込んだみたいに。

靴を脱いで、一歩踏み出す。

「真尋くん」

何度名前を呼んでも、同じ。
私の声だけが放たれて、消える。

少し乱れた布団。
洗った食器は水切りラックに立ててあるけど、すっかり乾ききっている。
ハンガーにかかった洗濯物には、見覚えがある。

その光景は、私が昨日の朝に部屋を出た時と何も変わっていない。

昨日から、帰ってない……?
どういうこと?

昨日の朝、真尋くんはバイトに行って、それから……。

最後に電話で話した時、真尋くんはバイトの休憩中だと言っていた。
それからずっと、連絡を取れていない。

それなら、私が次に行く場所はもう決まっている。

今度こそ会えることを信じて、私は部屋の外から鍵をかけた。