ひとつ、ふたつ、ひみつ。

あっくんが背中を見せて、私から距離を取っていき、やがて504号室へ姿を消した。

その一部始終を見届けた後、足の力が抜けてしまって、私は地面にぺたんとへたり込んでしまった。

告白をされた時くらい……、ううん、それ以上の衝撃。

今の、本当にあっくん?

男の人、みたいだった。

もちろん、今までもちゃんと男子には見えていたけど。
そうじゃなくて……。

「っ……」

自分がどんな表情をしているのか容易に想像がついてしまって、誰も見ていないのに口元を手で隠した。

びっくりした。
……ドキドキした。
私が恋をしているのは、違う人なのに。
この先も、それは変わらないと断言出来るのに。

「真尋くん、ごめんなさい……」

小さな小さな声で罪悪感を口にして、目を閉じる。

「会いたいな……」

ほんの少し前まで、そばにいたのに。
きっとまた、今日も声を聞くことが出来るのに。

こんなに不安になってしまうのは、あっくんの熱に当てられたせいかもしれない。


──それは、穏やかで。だけど、確実に。
冬の嵐の、始まりだった。