ひとつ、ふたつ、ひみつ。

私が真っ赤なのは、もう鏡を見るまでもない。
なのに、目の前に真っ赤な顔が見えるのは、鏡に自分を映しているわけじゃなくて。

「なんで、真尋くんまで赤くなるの?」

「……や、なんか。いきなり攻撃されたから、びっくりして」

攻撃とは。

こぶしを口に当てて照れている仕草を見ると、私ばっかりじゃないんだって確信を持てるから、安心する。

「あと、昨日のこまりを思い出した」

「! お、思い出さないで、変なこと!」

「こまりだって、俺のこと思い出しながら帰るつもりだったくせに。えっちー」

「可愛い言い方してもだめ!」

「あはは」

真尋くんは笑いながら私の首にガバッと抱きつき、すうっと息を吸った。

「えっ、えっ、な、なに?」

「んー? 猫吸い?」

「私、猫じゃないよ」

というか、そういうの、そっちの世界にもあるんだ。

「こまりから、俺と同じにおいがする」

「シャンプーとか、借りたからだと思うよ」

「うん。嬉しい」

私の肩に手を添えて、そっと距離を取る。
真尋くんは幸せそうに、はにかんだ笑顔を見せた。

「今日は帰すけど、またすぐさらっていくから。覚悟しておいて」

「……はい」

そうやって、私たちは「またね」と、玄関先で別れた。
言葉通り、またすぐに顔を合わせる日を待ち望みながら。

自宅マンションまでの道を歩きながら、ふと後ろを振り返ってみた。

『好きだよ』って伝えて、見送ればよかった。
そんなことを、思いながら。