ひとつ、ふたつ、ひみつ。

「分かった。バイト行く……」

渋々自分を納得させた様子で、真尋くんは玄関前で引き止める手を離した。

その仕草に少し物足りなさを感じてしまって、私も寂しかったんだと気づく。

今までの日々で一緒に居すぎて、お互いが部屋の中にいることが当たり前だったから。

真尋くんなんて、うちを出ていくことを話した時に、「すぐに会いに来れるから」と、全然平気そうだったのに。
現在とのギャップに、クスッと笑みがこぼれた。

「じゃあ、またね、真尋くん」

「あ、送っていくよ。一瞬だし」

真尋くんの言う“一瞬”は、本当に言葉通りだから、いつ聞いても純粋にすごいと思ってしまう。

「大丈夫。今は家にママがいるから、間違ってママの前にワープしちゃったら危ないし。あと……」

変なところで言葉を切ってしまったから、真尋くんが私の顔を見ながら首を傾けた。

「あ、あと……、彼の部屋から帰る途中の……余韻とか、見える景色とか。……ドキドキする気持ちを、経験してみたいから……」

とても恥ずかしいことを白状してしまった気がして、血が沸騰していくような熱さを感じる。