ひとつ、ふたつ、ひみつ。


「もう帰るの?」「今日から学校休みって言ったのに」と、行く手を幅もうとする真尋くんをなんとか振り切って、私はお昼前に家に帰ることにした。

「今日は一日中一緒にいられると思ったのに」

ぷくっと右頬をふくらませてふてくされる顔は可愛いけど、私も譲るわけにはいかない。

だって。

「一日中は無理だよ。真尋くん、もうバイトの時間でしょ」

「帰ってきた時に、ここにこまりがいてほしかった」

しゅんとしてこうべを垂れる姿に、喉の奥から変な声が出そうになって、「んんっ」と咳払いをして堪えた。

「私の服、昨日のだし。さすがに着替えたいから。あまり長い時間帰らないのも、ママに変に思われちゃうし」

「服なら、俺の着る?」

「む、無理無理! もっと変に思われるから!」

自分が帰ってきたとたんに外泊をした娘が、男物の服を着て帰って来ようものなら、ママが卒倒してしまいそうだ。
そして、一緒に外国に連れていかれて、日本に帰してもらえなくなるかもしれない。