ひとつ、ふたつ、ひみつ。

片手にかばんを持って、玄関までバタバタと急ぐ。

「こまりー、こーまーりー」

「はいはいはーいっ。今行くから!」

あっくんはいつも、私が出て行くまで名前を呼ぶのをやめない。

返事をしながら、靴を履いていると、

「こまり」

「え? ……えっ!?」

真尋くんが、私の後ろにいた。
ここにいたら、あっくんに見られてしまう。

「だめだよ、真尋くん、見つかるから隠れてて」

「忘れものだよ」

「?」

何を? そう聞くことは出来なかった。
真尋くんが、私の額にキスをしたから。

「いってらっしゃい。気をつけて」

相変わらず、遠目でも至近距離でも、顔がいい。