ひとつ、ふたつ、ひみつ。

「うーん、ソファー借りてたんだけど、俺、ベッドじゃなきゃ寝れないみたい」

てへぺろ、じゃないよ。

異世界二日目とは思えないほどの落ちつきぶりに、この世界16年目の私の方がよっぽど動揺している。

「ごめんね、こまり。立てる?」

少しも悪いと思っていない笑顔が、ベッドからおりて私に手を差し伸べる。

うう、本当に顔がいいな。
私が真尋くんの顔を好きなのを、分かっててやってるんじゃないの?

「大丈夫だよ。約束通り何もしてないし、しないから。こまりは、俺を助けてくれた恩人だしね」

恩人じゃない女の子だったら、何かするみたいに聞こえますが。

「今、朝ごはん作るよ。キッチン借りてもいいかな」

「え、料理出来るの? 真尋くん」

昨日は何もかも動揺しっぱなしで、夕飯は作らずにコンビニに買いに行ったけど。

「うん、得意だよ。言ったでしょ、ここに住まわせてもらう代わりに、何でもするって。家事も、俺に全部任せてよ」

「わあ……」

最高か。

今まではママとふたり暮らしで、そのママが出張の多い人だったから、実質家事はほぼ私の仕事だった。