ひとつ、ふたつ、ひみつ。

私の顔をチラッと見た真尋くんは、ますます肩を抱き寄せる。

「こまり、そんな顔しないで」

「だって」

「言ったじゃん。今はもう、思ってないって。俺は、こまりに出会ったから」

「……っ」

瞳からこぼれそうになる涙を、袖口でグイッと拭って、私はスマホ画面の日本地図を指差した。

「真尋くん、私たちが今いるのは、ここだよ」

「うん。……うん? そうだね」

「真尋くんのお母さんが、生まれた場所は?」

「え……、ここ」

真尋くんは、関西地方の一県を指差す。

「お父さんは?」

「……ここ」

言葉に詰まった後、指が恐る恐る九州地方の一県を示した。

「分かった。今度、どっちも行こう。ふたりで」

「えっ、でも、ここは」

「あのね、私たちがいるここも、真尋くんがお母さんが生まれたここも、真尋くんのお父さんが生まれた国も、全部日本なんだよ。今の真尋くんは、どこにでも行けるの。一緒に行こうよ」