ひとつ、ふたつ、ひみつ。

「そ、そしたら……、真尋くんは消えちゃうんじゃないの?」

声が、震える。

「うん、そうかも」

「過去を変えたあとに、真尋くんのお母さんが誰か他の人と結婚しても、そこに生まれるのはもう真尋くんじゃないよね?」

「そうだと思う」

「……重罪人になるって分かってて、過去に行こうとしたのは、自分が消えた後は、罪も罰も関係がなくなるから?」

「そうだよ」

ああ、そっか、そうだったんだ。

だから真尋くんは、いつも何があっても、平気な顔で。

真剣な顔で、元の世界に戻る機械を直していたのは、自分を消すためだった。

真尋くん、あのね。
一緒のベッドで寝るのも、いってきますとただいまのキスも、屋上でごはんを食べるのも、どこに行くのも、好きって言い合うのも、全部全部。
ふたりでいなきゃ、隣にいなきゃ、出来ないんだよ。

「ひどいよ……。私が真尋くんを好きだって、知ってるんじゃないの?」

「うん……」

「一緒にいたいって、言ったくせに」

「うん」

「うそつき……」

「……」

「なんで答えないの。うんって、言えばいいのに」

「嘘じゃないよ」