「こまり、泣かないで」

「だ、だって、真尋くんが……っ!」

声が、喉元で詰まる。

真尋くんは確かにここにいるのに、指先の熱を感じるのに。
怖い……。

「ま、真尋くんが……っ、自分の存在をなかったことにしたかった……、みたいに」

違うって、言って。
またあの()ねた顔で、怒って。

そしたら、ごめんって謝ることが出来る。
またふたりで、ずっと一緒にいられるんじゃないかって、夢を見ることが出来るから。

「……うん、そうだよ。父さんと出会わなければ、俺が生まれなければ、母さんはずっと幸せに暮らせるから。俺は、俺を最初からなかったことにしようと思った」

目の前が、真っ暗になる。