「えっ、ま、真尋くんって、そういう感情あるんだ……!?」

「あるよ。俺のこと、なんだと思ってんの」

「う、い、痛いよ……」

締めるように、ますます腕の力を強くされて、ドキドキよりも苦しさが先にくる。

つ、つぶれる……!

「だって、そんなの……、真尋くんが普通の男の子みたいで」

「今まで普通じゃないと思ってたの、こまり」

「……若干」

「うわ、ちょっと傷ついた。えい」

「うっ? ちょ、ほ、本当に苦し……っ!」

骨がギリギリと音がしそうなくらい、強い。
折れそう。

だって、真尋くんは出会った時から普通じゃなかった。

いきなり何もないところからベランダに落ちてくるし、世界が違うとか言い出すし、有無を言わさず空の上まで連れていくし。

車も電車も知らなくて、あいさつはキス。
ためらいもなく抱きしめてきて。

……自分のことは、話したがらない。いつもどこか、線を引かれている。

だから。

私のことなんて、いつか離れても平気な存在じゃないかって、ずっとそう思っていたのに。