どうしよう、怒っているかもしれない。

「……事故?」

「っ!」

ほら、見なくてもわかる。
声色が、こうやって……

「──え……っ」

ぐっと肩をつかまれて、その痛みに思わず顔を上げる。

耳まで包むくらいの大きな手のひらが、あごにかかる。

周りから、酸素が消えた。

言葉が出なくなったのは、唇を塞がれているから。

「っ、ん……っ!? え、な……っ──」

一瞬離れた唇が、すぐにまた私の声を奪う。

「ぅ、ん……っ」

あれ?
あれ? なに、これ。

さっきと、全然違う。

今度こそ、私、真尋くんと……キスしてない?

呼吸が戻っても、なんだかまだ酸素が薄い。

何が起こったのか理解するのに頭が爆発しそうな私に、真尋くんが囁く。

「……これで、事故じゃなくなっちゃったね?」